慌てた私は、「それより!」と話題を変えた。


「美月ちゃん、やりたいこととかないの? それか、夏休みの間に絶対やるぞって決めてたこととか」

「えー?」


美月ちゃんが腕組みをして考え込んだ。


「部活頑張るぞ、くらいのことしか。だけど楽器をヒィに始めてもらうのも何だか違うし……。あ!」

「あ、何かある?」

「お弁当!」


美月ちゃんが園田くんを見ながら言った。


「あーくんにお弁当を、毎日欠かさず作ってあげてたんだ。それが出来なくなったのは、残念だと思ってた」

「おべんとう……」


呟くように言うと、長尾くんが「ああ、美月ちゃんのお弁当は有名だよね」と言った。


「栄養バランスを考えてる上、すっげえ美味いって噂の。何、美月ちゃんの心残りその1はお弁当?」

「うん、そうみたい」


そう言って、私は考えた。
なるほど、お弁当か。
しかし、美月ちゃんは包丁一つ握ることが出来ない状態な訳で、そんな美月ちゃんがどうやったらお弁当を作れるのか……。


「うーん! あ、そうだ。じゃあ、私が、美月ちゃんの指導を受けながらお弁当を作る、ってことでどうかな」

「え? 福原さんが?」


声を上げた園田くんに頷いてみせる。