「杏里、やめろ。彼女がいたから、お前はまた美月ちゃんと会えたんだ。感謝するべきだ」


長尾くんが諫めるように言えば、園田くんがはっとした。ぐっと唇を噛む。
それから、私に深く頭を下げた。


「ごめん。福原さんには、お礼を言うべきだったのに。美月も、ごめん」

「い、いいの。頭上げて」


慌てて言う。


「とにかく! 美月ちゃんが視えるのは福原さんだけなんだ。そのことをもうグチグチ言うのは止めよう。不毛だ」


仕切るような長尾くんの言葉に、私たちは頷いた。彼の言う通りだ。


「これからのことを話そうよ。どうあれ、美月ちゃんは今ここにいる。で、福原さんと美月ちゃんは、美月ちゃんの心残りをなくそうといういう話で纏まってるんだよね?」


長尾くんに話を向けられて、頷いた。


「そうなの。やっぱり、今の状態のままでいられるわけがない、って美月ちゃんが……」


園田くんを窺いながら、言葉を選ぶ。
再会(と言えるかも難しいけれど)できたばかりなのに、成仏とか消えるとか、そんなことをなるべく言いたくはない。


「私は、出来る限り美月ちゃんに協力しようと思ってる。美月ちゃんの意志を人に伝えられるのは、私だけでしょ? なんでも、出来ることをしたいなって」

「ありがとう、ヒィ」


美月ちゃんが私の横で頭を下げる。

それに、「そんなことしないでよ」と私は笑って答える。


「……ありがとう」


別の方角から言われて、それは園田くんだった。彼はまた、深く頭を下げていた。


「ありがとう、福原さん」

「や、やめてよ。園田くん。私は別に……!」


お礼を言って欲しいわけじゃない。