「初めて花火大会に行った時! 
美月ちゃんの下駄の鼻緒が切れちゃって、園田くんは美月ちゃんに自分のスニーカーを履かせた。
それで自分は裸足で帰ろうとして、そんなの嫌だって言った美月ちゃんも裸足になって、二人で裸足で歩いて帰った!」

「おま……何、言って……」


園田くんの顔色が変わる。私を、ありえない物を見るような目で見るのは、昨日の長尾くんとまるきり一緒だった。


「美月ちゃんと園田くんしか知り得ない、二人だけの思い出だよね。私はこれを、美月ちゃん本人から聞いた」


気持ちが昂る。
この機会を逃したら、もう園田くんは私の言葉を聞いてくれない。

私は少しでも信じて欲しくて、園田くんをまっすぐに見つめた。
信じて。
私の中に、あなたを騙そうなんて思いはない。


園田くんの顔に、不安や怒り、もしかしてという懐疑の思いが見え隠れする。
彼の足は完全に止まっていた。


「昨日の私の話、信じて欲しい。私、美月ちゃんの幽霊が見える。話ができる。
彼女は、信じて欲しいがために、私に二人だけの大事な話をしてくれたんだよ」

「そ、んなの。前に、美月から……聞いた、とか」


園田くんの瞳が揺れる。
私をそれを、首を横に振って否定した。


「美月ちゃんは、二人の思い出を簡単に人に言う子じゃないでしょ? ねえ園田くん。私に何でもいいから質問して。美月ちゃんにしか答えられない質問をして。美月ちゃんが、答えてくれる」


私の横には、美月ちゃんが立っている。
その彼女の背に手を添えるようにして言うと、園田くんの目が大きく見開いた。唇がわなわなと震える。


「園田くん、言って」

「あーくん、言って!」


長い時間、園田くんは美月ちゃんがいる場所を凝視していた。
それから、震える声で言った。