「美月ちゃんの、幽霊? それ、本気で言ってる?」

「うん。至って本気。長尾くんにこの事実を信じてもらうために、美月ちゃんから秘密の話を教えてもらったんだ。
こんな状況じゃないと、美月ちゃんは絶対に口外しなかったって言ってる。
私も美月ちゃんも、信じてもらいたいからなりふり構ってられないの」


ねえ? と美月ちゃんを見ると彼女がコクコク頷く。
長尾くんも私に習うように美月ちゃんのいる方を見たけれど、彼女を視界に入れることはできなかったようだ。
不安げに視線が彷徨っている。

それから私は、戸惑ったままの長尾くんに訊いた。


「信じてくれる?」

「いや、信じるも何も……。福原さん、自分がどれだけ突拍子もないことを言ってるかわかってる?」

「わかってる。だから、信じてもらえるまで、私は美月ちゃんから知られざる長尾くんの話を聞いて、ここで言うことにする。
逆に、質問してくれてもいいよ。美月ちゃんが答えてくれるし」

「は……? マジ、かよ。福原さんそれ本気?」

「本気。ていうか、私にこんな嘘をつくメリット、ないでしょ」

「まあね。頭おかしい子て言われるだけだよ。でも、さあ……」


長尾くんが、さらりとした前髪をかきあげてため息をつく。
彼が私を見てくるが、私はその視線をまっすぐに受け止める。
目を逸らすような負い目などない。嘘ではないのだと、もっと強く見つめ返してやった。

先に逸らしたのは長尾くんだった。
彼は視線を遠くに投げ、考え込むように口を閉じた。
ゆっくり、空の色がオレンジ色に変わっていく。


「……香奈さんが俺をフッたときの台詞は?」


長い時間の果て、ふいに長尾くんが言った。
私を試すような目を向ける。


「顔だけのチャラい年下には興味ない!」


美月ちゃんが即座に答えた。
その答えに私は思わずクスリと笑ってしまう。
園田くんのお姉さん、あんなに可愛いのに、そんなキツいこと言うんだ。