「ねえ、君。どこ見てんの? 俺のこと無視してるつもり?」


苛立った長尾くんの声にはっとして視線を戻す。


「ああ、ごめん。そんなつもりはない」

「じゃあ話を続けさせてもらうけど。俺としては君がどんな話をあいつにしたいのかは分からないけど、あんなに怒らせるくらいなら止めてもらいたいんだよね」

「本当に大事な話なの。で、長尾くんはこの練習の後は時間とれるかな?」

「は?」


長尾くんが目を見開いた。


「なんで、俺?」

「園田くんには、なかなか話を聞いてもらえそうにないので、長尾くんに相談することにしようと思って。いいかな?」


長尾くんが、整った顔に子供みたいな戸惑った表情を浮かべた。


「いい、長尾くん?」

「いいって、え、えと……君、名前はえっと」

「二年三組、福原陽鶴」

「福原さん、福原さんね、了解。で、福原さん、相談って」

「大事な話なの。詳しくは後で話すので、少し時間くれる? 長尾くんが無理だというのなら、私はまた直に園田くんに話をしに行くだけだけど」


長尾くんが眉根を寄せた。