「伝えたいことって、どうせ告白でしょ? 人が弱ってる時に付け込もうなんて、そんな考えでうまく行くわけないじゃん。君さ、性格悪いよ。悪いけど、絶対ムリだって」


「ハァ?」


思わず低い声が出た。

すごくムカついた。
そんな卑怯なことを、私は考えない。
しかも、今このタイミングで言うわけないでしょうが。


私の声がぐんとトーンが下がったことに気付かず、長尾くんは続けた。


「だいたい、あの美月ちゃんに簡単に成り代われるわけないでしょ。
美月ちゃんは君みたいなズルい子じゃなかった。
それに君よりずっと、かわいかったし?」


私を傷つけようとする嫌な色を、言葉に感じた。
思いきり、大げさにため息をついてやった。
馬鹿じゃないの、この人。


「短絡的。告白なんて、そんなくだらないことじゃないし」

「くだらない? じゃあ、君は何を杏里に言って、あんなに怒らせたわけ?」

「それ、長尾くんに言う必要ある? 園田くんと友達かもしれないけど、この話に長尾くんには関係ないんで、出しゃばらないでくれる?」


怒りを思いっきり含めて言うと、長尾くんがたじろいだ。
と、涙を拭っていた美月ちゃんが「ヒィ!」と私の名前を呼ぶ。


「ヒィ。もしかしたら、穂積くんなら分かってくれるかもしれない!」

「ハァ?」


ごめん、美月ちゃん。
今のこのやりとりで、私の中の長尾くんの評価は大下落なんですけど。
絶対、この人信用できない。
ていうか、信用したくない。

しかし美月ちゃんは私に重ねて言う。


「感じ悪く思ってるだろうけど、本当はすごくいい人なの!
だから、お願い。穂積くんに言ってみて。それに、穂積くんならあーくんより冷静に話を聞いてくれると思うの」


えー。ほんとにー?
そんな思いを込めて美月ちゃんを見ると、彼女はコクコクと何度も首を縦に振った。


……まあ、私より美月ちゃんのほうが余程この人のことを知っているだろうから、それに従うべきなんだろうけどさ。


美月ちゃんが「お願い! 信じて!」と私を拝む。

仕方ないので、私も一度だけ頷いた。
美月ちゃんの言うことだから、信じてあげよう。
ムカつくけど、この人。