「は?」

「美月ちゃんの霊が見えるの、私。彼女とお話もできるの。それで、私……」


思わず口を閉じたのは、園田くんの怒りの形相に気圧されたからだった。
地面を拳で殴りつけ、園田くんは私を下から睨みつけた。


「……ざけんじゃねえぞ」

「園田、くん」

「ふざけたこと言ってんじゃねえつってんだ」


大きな声で彼が叫ぶ。

ああ、信じてもらえなかった。
だって、私が言っているのは、とうていありえない話だ。
こうなるかもしれないとは、思っていたけれど。

私は思わず身を竦ませ、美月ちゃんは「お願い聞いて、あーくん」と言った。


「人が……美月が死んでんだぞ。ちゃんとわかってんのかよ、お前!」


園田くんが再び地面を殴った。
手加減のないそれは、手の皮を傷つけたらしい。
美月ちゃんが「やめて! 怪我してるからやめて!」と声を大きくした。

しかし、彼女のそんな涙で濡れた声も、彼には届かない。


「園田、く……」

「どっか行け」


園田くんは私の言葉を遮って、低い声で言った。


「もう俺の前に出て来るな。しゃべりかけるな。次にそんなこと言ったら、女でも殴るぞ」

「……お願い、聞いて。聞いて、園田くん」

「どっか行けっつってんだろ!」


園田くんは、もう私の話など聞く気はない。
殺気にも似た、怒りを込めた視線を私に真っ直ぐにぶつけてきた。
その瞳の強さに、私は一瞬息の仕方を忘れる。
それでもどうにかはふはふと酸素を取り込んで、言葉を伝える。



「……今日のところは、帰る。でも、落ち着いたら、一回だけでいいから私の話を最後まで聞いてほしい。私の言ってることは、本当」

「いい加減にしとけよ、お前」


園田くんが立ち上がりかけたその時、私たちの間に一人の男の子が飛び込んできた。