「そんな状態で何で練習になんか出てるの? 休んでてよ!」


美月ちゃんが私の横をすり抜けて、園田くんに駆け寄った。
園田くんの前に座り、「あたしはここだよ、あーくん!」と叫ぶ。
しかし、園田くんの視線は私に向けられていた。


「福原さん。頬の傷、酷いね」


園田くんがぎこちなく言った。


「こんなの、平気。園田くんのほうが、酷いよ」

「俺も平気だよ。で、何か用?」

「あ、うん……」


園田くんがやはり自分のことが見えていないという事実と、余りの衰弱ぶりにショックを受けた美月ちゃんが、涙目で私を振り返る。


「ヒィ! お願い!」


その縋るような瞳に一度頷いて見せて、私は「話があるの」と彼に言った。


「話? 何?」


「あの。どうか冷静に聞いてほしいんだけど……」


ごくんと唾を飲み込んで、私は言った。


「……私ね、美月ちゃんの霊が見えるの」


園田くんの目が、大きく見開かれた。