今日の暑さはことさら厳しい。
陸上部は四十分ほどで練習を中断し、休憩に入った。
汗だくの部員たちはまっしぐらに水場に駆けていき、充分に水分をとってから木陰で休み始める。

みんなで固まって休憩をとっている彼らからずいぶん離れたところに、園田くんはいた。
膝を抱えるようにして座り、顔を伏せている。

誰にも話しかけられたくない、という雰囲気の園田くんを、部員たちは心配そうに遠巻きに見つめていた。


「あーくん、いつもならみんなと一緒にいるのに」

「うん」


普段ならみんなとともに談笑している姿を知っているだけに、その光景は異常だ。
園田くんは、美月ちゃんの死から一向に立ち直れていないんだ。

だけど、それも、そうだ。
だってまだ、あれから十日も経っていない。


「よし。行くよ、美月ちゃん」

「お願いします」


私たちは二人そろって深呼吸をして、園田くんの元に向かった。
私がそっと近づくと、園田くんが顔を上げないまま「ごめん。ちょっと放っておいて」小さな声で言った。


「あの、園田くん」

「え?」


部員の誰かだと思っていたのだろう。
声をかけると園田くんがぱっと顔を上げた。


「あ……、福原、さん」

「こん……にち、は」


笑顔すら作れず、言葉もまともに出てこなかったのは、仕方ないと思う。

園田くんにこれから重要な告白をしなくてはいけないという緊張はもちろんのことだけど、私を見上げてきた彼が、あまりにも酷い状態だったからだ。
遠目からでもやつれているのは分かったけれど、近くで見ると衰弱ぶりが激しくて驚く。