さて。

夏休み前の学校って、ムカつくくらい浮き足立っている。


それは期末考査が終わった解放感と、
夏休みの予定がどんどん具体的になっていくワクワク感のせいだと思う。

しかし、ついさっき涙も出ないくらい情けない結果が返ってきた上、
フラれたばっかで予定一切なしの私は全く気持ちが浮き上がらないわけで。

いや、休みは嬉しいよ?
朝ねぼうできるだけで、充分。
夏休み最高。
ビバ夏休み。


だけどさ、みんなちょっと、浮足立ちすぎじゃない?
もうちょっと、私みたいな子に遠慮しちゃってもいいんじゃない? ねえ?


「浮足立つよ、そりゃ。だって、高校二年生の夏は一生に一度しか来ないんだよ? あんたの都合なんで知ったこっちゃないね」


ぶつぶつと言う私をばっさり切り捨てたのは、友人である明日香(あすか)だった。
私はそんな彼女にぶうっと頬を膨らませてみせる。


「私は、もう少し周囲への気遣いがあってもいいんじゃないかなって思って」

「何様よあんた。そんなことよりさ、これ見てよ」


明日香は私の目の前に、『簡単綺麗に浴衣を着る本』なんていう雑誌を広げた。