「あ」

「え?」


ふいに、美月ちゃんが声を洩らしたので鉛筆を持つ手を止めた。


「どうかした? 美月ちゃん」

「ブラバンの、音がする」


美月ちゃんが耳を澄ませるような仕草をしたので、私も同じようにしてみる。


「あ、ホントだね。今から練習なのかな、って違うか。もうお昼だから、食事の後から始めるのかな」


時計を見上げたら十二時をさそうとしていた。さすがに今から練習スタートということはないだろう。


「あ、そうかも。三年の先輩が、早めに来てご飯食べてから練習に入る人ばかりなんだ」

「へえ、そうなんだ」

「上がそんなことすると、下が大変なんだよね。午後から練習って話でも、結局十一時には来て支度しないといけないんだもん」


美月ちゃんは軽いため息をついた。


「支度、って?」

「椅子並べたり、ジュース冷やしたり。この時期はおしぼりも作るんだ。汗かくしね」

「へ、へぇぇ」

「ちゃんとできてないと、怒られるし。すっごくコワイんだぁ」

「へ、へえぇ……」


ブラバンは文化系でありながら、実態は体育会系だと聞いている。
さぞかし上下関係に厳しい事だろうと、生粋の文化系女は思い、身震いした。

ウチの先輩たち、ふらっと来てふらっと帰ってくんだけど、アドバイスとかいっこもくれないんだけど、それって先輩らしくないなって思ったりしたんだけど、それで全然いいよ!

問題ない、オッケー!

こういう気軽な感じが、私大好きなんで!