そんな音の隙間を、美月ちゃんの声がするりと流れてくる。


「ここ、本当にグラウンドが良く見えるね」

「そうでしょ。誰がサボってるかも、すぐわかるよ」

「うそー。ああ、でもほんとだね。あそこ、一年生の子が欠伸してる」

「うちの顧問、酷いんだよ。そんなのを見つけると、窓開けて大きな声で叫ぶの。そこのナントカ部の坊主、さぼってんじゃねーぞー! って。言われた子の驚いた顔ったら、ホントにコメディみたいに歪んじゃっててさ」


美月ちゃんが口を大きく開けて笑う。


「あはは、おかし。ああ、もっと早く知ってたら、あたししょっちゅうここに来てたのに」

「そうだね。でもその時はみんなにモデルやって! ってせがまれて大変だったかもしれないよ」

「全然、やるよ。それで、ここにいさせてもらえるなら」


話しながら、ふっくらとした頬や濡れた唇を写し取っていく。
少しだけ色素の薄い茶色い瞳が、下の景色を楽しそうに眺めている。

10分はあっという間だった。
美月ちゃんは私の描いた自分を見て、ほろりと笑った。


「やだ、あたし可愛く描かれすぎじゃない?」

「そんなことないよ。ねえ、もっと描いていい?」

「うん。こんなに可愛くしてくれるなら、喜んで!」


それから、彼女の後姿や立ち姿をたっぷり時間をとって描いた。