クリスチーネ豪陀学園。
通称『クリ高』と呼ばれる我が校は、マンモス校とまではいかないけれどそこそこ大きな高校だ。
四階建ての校舎は三棟に別れ、それぞれ連絡通路で繋がっている。
大きなグラウンドや体育館、剣道場や講堂、レスリング場なんてものまである。

私の所属している美術部の部室は、一棟三階の、一番端っこにある。


「ふわ、広い! しかもなにここ綺麗!」


部室に入った美月ちゃんの第一声に、クスリと笑った。
作り付けのガラス戸の嵌った棚に悠然と並ぶ石膏像。
その数は、一般の高校美術部の所有する量ではない。
プシュケ坐像やブルータス首像、果ては観音立像まである。
我が美術部自慢、そして顧問の杉田先生が毎日のように手入れをしている『コレクション』でもある。

天井まで届く大きな棚には画材が整列し、描きかけのキャンバスがいくつも並んでいる。


「こういうの、なんて言うんだっけ。ええと、あ、そうだ。アトリエ! アトリエって言うんだよね。ふああ、しかし、ホントに綺麗」

「すごいでしょ、ここ。部室にエアコンつけてもらってるの、うちの部くらいらしいよ」


暑さ寒さを感じない美月ちゃんなので気付かなかったようだけれど、ここは常にひんやり涼しい空気で満たされているのだ。
ここに来るまでにしっとりと汗ばんでいた私の肌も、すっかりサラサラになっていた。