*
美月ちゃんは、あの事故で命を落とした。
ひまわりで鮮やかに彩られた祭壇の中央には、どの花よりも生き生きとした、天真爛漫に笑う美月ちゃんがいた。
「即死ですって……。あんないい子が、なんて惨い……」
「何でぇ⁉ 何で美月が死ななきゃなんないの!」
「嘘だよ、嘘って言ってよ、美月ぃ……」
沢山の弔問客で溢れた斎場は、涙で濡れていた。
誰もが涙を浮かべ、美月ちゃんの早すぎる、むごい死を悼んでいた。
姉とワタルさんの手を借りて、どうにかこの場にやって来た私だったが、その悲しみの渦に呑まれた。
美月ちゃんは、本当に、みんなに愛された子だった。
誰にでも優しくて、朗らかで、明るくて。
そんな子がどうして、十六歳なんて年齢で命を絶たれなければいけないのだろう。
「あ! 陽鶴! あんた、大丈夫なの⁉」
端っこにいた私に気付いたのは、明日香だった。
泣きすぎてアイメイクがはげ落ちている明日香は、私を見て益々泣いた。
「私、あんたまで死んじゃったらどうしよう、って……。よかった。ホントに良かった……」
「ありがと、明日香……」
「顔、酷い……。痛む?」
私は、右腕と右頬に擦り傷、右足首に捻挫を負っただけだった。
右頬の擦り傷は結構大きくて、青あざもできていて見た目は酷いけれど、しかしそんなのは日が経てば治るものだ。
何より、私は死んでいない。
命があるだけ、幸運だったのだ。
「大丈夫。こんなの、平気」
明日香に笑ってみせて、私は祭壇に向かって歩き始めた。
ふらふらと歩く私の傍に、姉と明日香が付き添ってくれた。
美月ちゃんの笑顔が近づく。
そっと横たわる柩の上には、彼女の愛用していたトランペットが静かに置かれていた。
遺影を見る。
いつもと変わらない、しかし物言わぬ笑顔に、胸が締め付けられる。
姉と明日香の腕を掴んだ手に力が籠もった。
最後の時、美月ちゃんは笑っていた。
スカートの裾を軽やかにひらめかせ、私よりも園田くんよりも生き生きとしていた。
なのに、嘘でしょう?
そんな美月ちゃんが、死んじゃったなんて、嘘でしょう?
美月ちゃんは、あの事故で命を落とした。
ひまわりで鮮やかに彩られた祭壇の中央には、どの花よりも生き生きとした、天真爛漫に笑う美月ちゃんがいた。
「即死ですって……。あんないい子が、なんて惨い……」
「何でぇ⁉ 何で美月が死ななきゃなんないの!」
「嘘だよ、嘘って言ってよ、美月ぃ……」
沢山の弔問客で溢れた斎場は、涙で濡れていた。
誰もが涙を浮かべ、美月ちゃんの早すぎる、むごい死を悼んでいた。
姉とワタルさんの手を借りて、どうにかこの場にやって来た私だったが、その悲しみの渦に呑まれた。
美月ちゃんは、本当に、みんなに愛された子だった。
誰にでも優しくて、朗らかで、明るくて。
そんな子がどうして、十六歳なんて年齢で命を絶たれなければいけないのだろう。
「あ! 陽鶴! あんた、大丈夫なの⁉」
端っこにいた私に気付いたのは、明日香だった。
泣きすぎてアイメイクがはげ落ちている明日香は、私を見て益々泣いた。
「私、あんたまで死んじゃったらどうしよう、って……。よかった。ホントに良かった……」
「ありがと、明日香……」
「顔、酷い……。痛む?」
私は、右腕と右頬に擦り傷、右足首に捻挫を負っただけだった。
右頬の擦り傷は結構大きくて、青あざもできていて見た目は酷いけれど、しかしそんなのは日が経てば治るものだ。
何より、私は死んでいない。
命があるだけ、幸運だったのだ。
「大丈夫。こんなの、平気」
明日香に笑ってみせて、私は祭壇に向かって歩き始めた。
ふらふらと歩く私の傍に、姉と明日香が付き添ってくれた。
美月ちゃんの笑顔が近づく。
そっと横たわる柩の上には、彼女の愛用していたトランペットが静かに置かれていた。
遺影を見る。
いつもと変わらない、しかし物言わぬ笑顔に、胸が締め付けられる。
姉と明日香の腕を掴んだ手に力が籠もった。
最後の時、美月ちゃんは笑っていた。
スカートの裾を軽やかにひらめかせ、私よりも園田くんよりも生き生きとしていた。
なのに、嘘でしょう?
そんな美月ちゃんが、死んじゃったなんて、嘘でしょう?