そっか。
私、あのときトラックにぶつかって、でも生き永らえたってわけか……。

のろのろと両手を持ち上げる。
右手に包帯が巻かれていたけれど、ピリピリと痛むけれど、しかしちゃんと動く。
グーパーを繰り返してみると、両手は私の意思に沿ってきちんと動いた。

足も動かしてみる。
顔をしかめたくなるくらいの痛みが右足に走ったけれど、動かせないほどでもない。
ああ、大丈夫だ。
私の体に、目立った不備はない。

そんな私の考えていることが、ワタルさんにはわかったのだろう。


「大丈夫。後遺症のあるような傷は一切ない。これからも、絵は描けるよ」

「そ、っか。よかった」


ほっと息をついた私は、その時ようやく思いだした。
あの場に、私以外の人間が二人いたことを。
ワタルさんに目を向け、「どうなったんですか⁉」と叫んだ。


「私と一緒にいた二人はどうなったんですか⁉」


ワタルさんが、眼鏡の奥の瞳をぎゅっと閉じた。


「ワタルさん!」


叫ぶように訊いた私に、ワタルさんはゆっくりと言った。


「君と一緒にいた、二人は……」