「よく、彼と友達と三人で、ここを歩いたんですよ」
廊下を見渡して、私は懐かしくなる。
少しだけ古くなった校舎。
ここを三人で、束の間四人で笑いながら歩いた日々は、遠い。
だけど、思いだせばすぐにでも、鮮やかに蘇る。
「あ、そうだ。正面玄関にはまだあの絵が飾られているんですよ。『目覚め』が」
「え、そうなんですか?」
「ええ。我が校の誇りですもの。それに、私もあの絵が大好きです。無くてはならない物だわ」
「ありがとうございます。じゃ、見て帰ろうかな」
私は、あの絵をずっと飾ってくれることを、当時の校長と杉田先生にお願いした。
美月ちゃんのことを、みんなが忘れないでいて欲しくて。
だけど十数年経った今でも正面玄関なんていうセンターに飾ってもらえているとは思わなかった。
「ええ、ぜひぜひ!」
女性教諭と話をしながら廊下を歩く。
今にも明日香が飛び出して来たり、前田くんがぎこちなく笑ったりしそうだ。
私は一歩進むたびに、自分が女子高校生であった時の感覚が戻ってくるような気がしていた。
「あ」
正面玄関の、絵の前に一人の女の子が立っていた。
少しだけ上を向くようにして絵を眺めている髪の長い彼女は、気配を感じたのかゆっくりこちらを見る。
大きな黒い瞳と目が合う。
その瞬間、彼女はひまわりが咲くように笑った。
廊下を見渡して、私は懐かしくなる。
少しだけ古くなった校舎。
ここを三人で、束の間四人で笑いながら歩いた日々は、遠い。
だけど、思いだせばすぐにでも、鮮やかに蘇る。
「あ、そうだ。正面玄関にはまだあの絵が飾られているんですよ。『目覚め』が」
「え、そうなんですか?」
「ええ。我が校の誇りですもの。それに、私もあの絵が大好きです。無くてはならない物だわ」
「ありがとうございます。じゃ、見て帰ろうかな」
私は、あの絵をずっと飾ってくれることを、当時の校長と杉田先生にお願いした。
美月ちゃんのことを、みんなが忘れないでいて欲しくて。
だけど十数年経った今でも正面玄関なんていうセンターに飾ってもらえているとは思わなかった。
「ええ、ぜひぜひ!」
女性教諭と話をしながら廊下を歩く。
今にも明日香が飛び出して来たり、前田くんがぎこちなく笑ったりしそうだ。
私は一歩進むたびに、自分が女子高校生であった時の感覚が戻ってくるような気がしていた。
「あ」
正面玄関の、絵の前に一人の女の子が立っていた。
少しだけ上を向くようにして絵を眺めている髪の長い彼女は、気配を感じたのかゆっくりこちらを見る。
大きな黒い瞳と目が合う。
その瞬間、彼女はひまわりが咲くように笑った。