次の瞬間、彼女は私の体から弾きだされた。


「……! ミィ!」


体を取り戻した私は、その場に倒れ込んだ美月ちゃんに駆け寄る。
仰向けに寝転んだような美月ちゃんは、私を見て笑った。


「言いたいこと、全部伝えることができた。もう、満足」

「ミィ、ミィ!」

「最後は、ヒィだね。今までありがとう。こんなあたしを大好きって言ってくれてありがとう。
ヒィがいたから、あたし、幸せな49日間を過ごせた」

「私もだよ、ミィと一緒で嬉しかった。すごく楽しかった」

「ねえ、ヒィ。あたしは、ヒィの好きなあたしのままかな?」

「あ、当たり前じゃない……! 私の憧れの、大好きなミィだよ!」


涙止まれ。
止まれ、今すぐ。

泣かないって、誓ったじゃないか。
今すぐ、止まれ。

涙で、美月ちゃんが霞んでしまう。
美月ちゃんが見えなくなってしまう。

もう、お別れなのに。

何度も拭いながら、私は美月ちゃんを見る。


「大丈夫。ミィは変わらない。大好きなまんまだよ」

「ふふ、よかった。嬉しい」

「ミィ、私、私、……」

「ヒィしかあたしのこと見えない理由、今なら分かる。
ヒィじゃなきゃ、ダメだったんだ。あーくんでも、誰でもない。
あたしのことを真っ直ぐに見てくれるヒィがいたから、あたしは逃げ出すことなくこうしてここまでこれたんだと思う。
心残りもなく、逝けるんだと思う」


美月ちゃんが私の頬に手を伸ばした。


「ありがとう。大好きだよ、ヒィ」


触れるか触れないかの距離で手が止まる。私は何度も頷いた。


「私も大好きだよ。大好き」