二人で空を眺めていると、「何してんのさ」と穂積君くんの声がかかる。


「杏里がお預けくらってギリギリしてるよ。こっちおいでよ」

「ほら! 花火やんぞ!」

「……全く。あーくんってば情緒がない。ね、ヒィ」

「ふふ、ほんとだね」


月明かりの降り注ぐ薄闇に、花が咲いた。
赤、白、黄色、緑。

たくさんの花たちは、散ってはまた生まれる。
絶え間ない花盛り。
私たちは笑い合いながら、いくつもいくつも花を咲かせた。


「ふあー、楽しすぎ! なんか疲れちゃった!」


美月ちゃんがぺたんと座り、膝を抱える。
両膝に頬を乗せて、私たちを眺める。
少し離れたところで、園田くんと穂積君が手持ち花火をぐるぐると回して遊んでいた。
照らされた顔は楽しそうに笑っている。


「綺麗だなあ。あたし、こんなに沢山の花火を見たの、初めてかも」

「まだまだあるよ。ほら、ミィも私と交代して花火やってよ」


まだ残っている花火を持ってみせる。手持ち花火はまだ一抱えはあった。


「んー。いい」


美月ちゃんは、園田くんの笑顔をじっと見つめている。


「もしかして、眠くなっちゃった? 少し寝てたらいいよ」

「ううん。ていうか、そろそろ、無理かも」

「え」


美月ちゃんは、あたしに視線を戻して、力なく言った。


「タイムリミットかも、ヒィ」

「……穂積くん、今何時⁉」


叫ぶように訊けば、火の消えた花火をバケツに入れようとしていた穂積くんが腕時計を見る。


「え? えっと……、くそ、12時、回ってる!」


足が竦んだ。
嘘でしょ。


「ミィ! タイムリミット、来たの⁉」


こんなタイミングじゃなくったっていいじゃない。もっと時間をくれたっていいじゃない。
せめてあと少し。
ねえ、神様。