「俺、明日からの二日間を、精一杯楽しむ。いっぱい笑って、腹痛くなるくらい笑って、美月ちゃんにも笑ってもらう」

「うん。私も、そうする。ニコニコ笑って眠る夜みたいに、ミィがニコニコ笑ってその時を迎えられるよう、に……」


私の頬に、涙が流れた。
昨日の夜から、気を緩めたら溢れる涙。
ずっと我慢していたけれど、美月ちゃんの前では必死にこらえていたけれど、穂積くんの潤んだ声に反応してしまった。


「やだ、泣いちゃっても、どうしようもないのにね」


ころんと転がり落ちた涙を拭うと、その手を穂積くんに掴まれた。
そのまま、引き寄せられる。
穂積くんの胸元に抱き留められた。


「ほづ、み、くん」

「今なら、誰も見てない。泣いていいよ。美月ちゃんが起きた時に笑えるように、今のうちに泣いときなよ」

「……甘え、られない。私、園田くんのことが」

「杏里を好きな君を好きになったんだ。そんなの、どうでもいい」


私の言葉を、穂積くんが止める。ぎゅっと腕に力が籠もる。


「どうして俺が、俺のことを今すぐ見て、って言ったか分かる?
少しでも、君に頼りにされたいから。支えになりたいからだよ」

「穂積く……」


なんて、優しいんだろう。
その温もりが、気遣いが、新しい涙を誘う。


「それに、ヒィちゃんは少しぐらいズルくなるといい。俺相手にいっぱい泣いて、弱音吐きだしておくんだ。
そしてすっきりして、杏里たちの前では、笑ってな」

「穂積、く……。ダメだよ、ホントに、泣いちゃ、う……」

「大丈夫。俺も一緒に泣いてるから」


抱きしめる腕は、確かに震えていた。


「ごめ……。穂積、く……っ」


私は、気付けば声を上げて泣いていた。
ずるいって、知ってる。
こんなの、ダメだってわかってる。
だけど、私が今弱音を吐きだせるのは、この人しかいない。

わあわあと泣きながら、誓う。
これ以上ずるくならない。
涙は、これきりにする。
美月ちゃんがいなくなるその瞬間まで、絶対泣かない。


穂積くんは、私の事をただ抱きしめて、一緒に泣いた。