「先生、それ何ですか?」


卒業生からの寄贈品だろうか。それにしては枚数があるけれど。不思議に思って訊けば、先生は「戻って来たんだよ」と段ボールを剥がしながら言う。


「戻って来た、って?」

「『こうこうび』の出展作品。お前の奨励賞のやつも、この中にある」


体の血液の温度が、すうっと下がった気がした。


「わあ、ヒィの絵? 見たーい! ちゃんとしたやつ、見たことなかったもんね」


私の背後にいた美月ちゃんが嬉しそうな声を上げた。


「せ、先生、あの、あとからでいいんじゃないですか」


慌てて言うと、先生は「やだよ」と言った。


「今改めて見たいんだよ、俺は。おい、向田、これは福原のじゃねえや。そっち開けろ」

「はい! あ、先生。ありました」

「おう、これこれ。イーゼル持って来いや」

「先生! 見なくっていいから! やめて!」


叫んだけれど、私の言うことを聴く人ではなかった。