次の日。
お弁当をいつものように食べてから部室に行けば、今日はあまり部員がいなかった。
これなら、少しくらい美月ちゃんと会話ができそうだ。


「あ、先輩。おはよーございます」


石膏像と向き合っていた桜子が私に挨拶をする。


「おはよー。今日は少ないね」

「静かでいいです。あ、でもあとから杉田先生が来るっていってたから、うるさくなります」

「あ、そう」


クスリと笑って、定位置と化した窓際に移動した。
スケッチブックと鉛筆を手にして日課に取り掛かろうとしたとき、桜子の言っていたうるさい人が入ってきた。


「おう、福原! お疲れ!」

「あー、先生。おはようございます」

「あ、お前まだ開けてねえじゃん。開けとけって伝言きいてねえのかよ」


先生は部室の隅に視線をやって、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
視線を辿れば、薄い段ボールの包みが幾つか立てかけてある。
その大きさから察するに、中身はキャンバスだと思う。


「あー。そう言えばすっかり忘れてました」


桜子が言うと、先生は眉間にぐっとシワを刻んだ。


「津川、お前いっつも俺の言うこと無視するよな……。まあいい。おい向田、開けるの手伝え!」


手近にいた向田くんという気弱な一年生坊主を捕まえて、先生は段ボールの開封を始めた。