園田くんの怪我から、三日が経った。
頭の怪我だから心配だったけれど、特に問題はなくて安心する。
園田くんも、もう少し体調に気を遣わなくてはと思ったらしくて、睡眠時間を多めにとるように気を付けるといっていた。
その方がいい。
園田くんは、今まで無理をしすぎていたのだ。


そんな中、異変が起きた。

まず、一つは美月ちゃんが私の体にほとんど入らなくなった。
これは異変と言うよりは、彼女の心の変化と言うべきかもしれない。
入るのを、嫌がるようになったのだ。


「どうしたの?」

「なんとなく。疲れちゃうし」


何度訊いても、美月ちゃんはへらりと笑ってそう言うばかりだ。


そして、もう一つ。
日増しに、眠る時間が増えた。

よくよく考えたら、ゆっくりと増えていたのかもしれない。
ただ、それが急に速度を増した気がする。
気付けば美月ちゃんは微睡んでいるという状態だった。


「今も、寝てる?」


いつものお昼ご飯の時間。
園田くんの問いに私は頷いた。


「今までも、よく寝てるなとは思ったんだけど、急に酷くなったんだよね」

「なんでだろうな……」

「うん」

「具合悪そうだったりする?」

「ううん、そんな感じはない。起きてるときはとても元気だし」

「そっか。なら、いいけど。でも、やっぱ気になるよな」


三人の間の空気は重い。
美月ちゃん一人の不調が、こんなにも私たちの心を沈める。


「そういやさ」


穂積くんが独り言のように言った。


「もうすぐ、夏休みが終わるな」

「ああ、そうだね。なんか、早かったな」


私の夏は、美月ちゃんの死とともに始まった気がする。
バタバタとしたこの季節は、あっという間に過ぎていった。


「あのさ」

「うん? 何だ、穂積」

「……あの……いや、なんでもない、や」


穂積くんは自分を見る私たち二人に、曖昧に笑ってみせた。
結局、美月ちゃんはお昼の時間には目覚めなかった。