「だから、美月にもっと近づきたいって思った。
触れられたら、繋がりを深くできるんじゃないかって、思ったんだ」


熱を分け合えたら、何かが変わるんじゃないかって、思えた。
園田くんはそう言ったあと、クツリと哀しく笑った。


「眠り姫の話みたいになるわけ、ないのにな。けっきょく、美月を泣かせただけだった。傷つけただけだった」


でも、分かるよ、園田くん。
私も、思うよ。
すごく、思う。

キスをしたら眠りから覚める姫がいるように、キスをしたら生き返る姫がいたって、いいのに、って。


「また美月と話せた、会えた。奇跡だよ。
でも奇跡も、続けばもっと欲しくなる。もっともっと、って欲張りになっちまう」

「……うん」

「もっとこうだったらいいのに、って、どうしても考えちまうんだ」

「欲張りじゃ、ないよ。欲張りなんかじゃない。だって、それは当然のことだよ」


美月ちゃんと再会した夏の朝、私は世界中の奇跡を掻き集めてでも彼女に生き返って欲しいと思った。
その思いは今も、変わらない。

せめて、時を戻してくれればいいのに。
あの、信号待ちの瞬間に。
そしたら園田くんも、私も、どうしたって彼女を死から守れるのに。

こぶしを解いて、園田くんが両手で自分の顔を覆った。


「……なあ、ヒィ」

「なに?」

「奇跡ってさ、永遠に続くものかな?」


ひゅ、と息を飲んだ。