あの日のきみを今も憶えている

穂積くんの少し非難するような言い方に、園田くんが「しまった」と言う顔をする。
それから、私に向き直って「ごめん!」と頭を下げた。


「別に否定したいわけじゃなくって!
ただ、ほんとに動き出しそうだなって思っただけなんだ。
手とか、ひらひらしそうだなって。ほんと、それだけで!」

「……うん。動きそうだよね。分かる」


私は、笑った。

胸がドキドキする。
心臓が勝手に頑張りだす。
堪らなく、嬉しいと思う自分がいた。


私も、最初からそう思ったんだ。


今にも、手が動いて、裾が舞うんじゃないか。
彼女はくるりとターンをするんじゃないか。
そう、思ったんだ。


だから、園田くんの感覚は、全然間違いじゃない。
むしろ、同じなんだって、思えた。
彼は私と同じ感覚を、今、抱いてくれている。

それが、無性に嬉しい。
私と同じ目で絵を観てくれる人が、いる。


「私、この絵を部屋にも飾ってるんだけどね。残念ながら、動いてくれないんだ」


そう言うと、園田くんは目を大きく見開いた。


「これ飾ってんの⁉ すげえな、ヒィ。夜中の二時くらいに見て見ろよ。絶対、くるくる回ってるぞ」


ダメだ、我慢できない。
私は、あははは、と声を上げて笑った。
幸せの感情が溢れすぎて、笑い声となって広がる。


「お、面白すぎる、園田くん。もし動いたら、一番最初に連絡するよ」

「うえ。やめてくれよ。怖くて寝れねえ」


ああ、いいよ、園田くん。
その感覚、すごくいい。

私は笑い過ぎてお腹が痛くなるくらい笑って、それから日暮れまで四人で遊んだのだった。