そんな私が外の世界にポンと弾きだされたのは、多分タイムリミットが来たからだ。
急に戻ってきた感覚にびくりとして、私は目覚めた。


「ふお⁉ なに、もう朝⁉」


ベッドの中から急に引きずり出されたって、今の驚きには敵わないだろう。
あわあわと自分の体の置かれた場所を触ってから、周囲を確認する。


「あ、これはヒィちゃんだ」


私は東屋に、園田くんと穂積くんと一緒にいた。
きょろきょろと見渡せば、周りには彼ら以外誰もいない。蝉の大合唱だけが響いていた。


「あ……、もう二時間経っちゃったの? 早」


私の目の前には、綺麗にかたずけられたバスケットがある。
お腹は満腹だし、すっかり食べ終わっているらしい。


「あっという間だよね。ヒィちゃん、ずっと寝てたんでしょ。美月ちゃんが何度か声かけたんだけど、返事がないって言ってたもん」


穂積くんに言われて、頷く。


「夢も見ずに爆睡だったようです」

「そっかそっか。で、美月ちゃんは?」

「えっと、あ。ここに寝てる」


足元を見れば、美月ちゃんが横たわっていた。すうすうと規則正しい寝息を刻んでいる。


「熟睡してるみたい。で、どうだった?」


二人に訊けば、園田くんが私の手を取った。
ぎゅうっと、痛いくらい力を込めてくる。


「ヒィ、ありがとう。すげえ、たくさん話ができた」

「……そっか、よかった」


園田くんの目はキラキラとしていて、それを見ただけで笑顔がこぼれてしまう。
よかった、喜んでもらえたみたいだ。


「美月だった。本当に、美月だった」

「そりゃそうだよ。だから何度も言ったじゃない」

「そうなんだけどさ、でも、俺、今すげえ興奮してる」


私の手がちぎれるんじゃないかと言うくらいにぶんぶんと振って、園田くんは「ありがとう」を繰り返した。