穂積くんから園田くんに視線を向ければ、彼は少し笑ってしまうくらい、顔に『期待』の文字が現れていた。
暑さからではなくて、頬が紅潮している。
それから、私は同じように頬を赤くしている美月ちゃんに言った。


「じゃあ、交代しよう」


両手を広げて言うと、「ありがとう、ヒィ!」と言って、彼女は私の体に飛び込んできたのだった。

ぐ、っと体の奥に押し込まれる感覚があって、私は自分が体を明け渡したことを知る。
少しだけ慣れてきた場所にそっと丸まった。


「あーくん……」


美月ちゃんの目から、涙が溢れる。
ゆっくりと手を伸ばして、園田くんの頬に手を触れる。

温もりを感じて美月ちゃんは一瞬だけ手を離し、そしてまた触れた。

肌の感触を確認するように、優しく撫でる。
園田くんは、そんな彼女のなすがままにされている。


「ああ。あーくん、だあ……」


声が潤む。
触れた指先がカタカタと震えた。


「あーくん。あーくんのあったかさ、分かるよ」


その手を、園田くんがぎゅっと掴んだ。


「あたしの声、ちゃんと届いてる? 聞こえてる? あたし、ここにいるよ」


「うん。分かる。分かるよ、美月……」


とてもとても力強く掴まれた手は、血液の流れを止めてしまうんじゃないかと思えた。


「会いたかった、あーくん。あたしだよ、美月だよ」

「うん。うん……」


俺も。
俺も会いたかった。


園田くんは、掠れる声でそう声を落として、掴んだ手を自分の頬に押し当てた。