もう一度女子に目を戻す。

「げ」

あやうくまた出そうになる声を飲み込んだ。

萌絵は、スマホのゲームに夢中らしく気づいていないみたい。


良かった……。


そして、また自分が今見たことを確認する。

その女子は彼になにかを言いながら、ハンカチで顔を覆っているのだ。

肩の上下で泣いているのがわかる。


泣いている・・・・・・。


彼が、彼女を泣かせている。

そこまで考えたとき、ふと視線を感じた。


彼がこっちを見ていたのだ。