「いっっっったあああああ!」


思わず大きな声が出た。いつもなら周りを気にするくせに、あまりの衝撃にもうそれどころではない。膝から崩れ落ちるようにその場に倒れこみ、鼻を両手で押さえて天を仰げば生理的な涙でじわりと視界が滲んだ。


「ちょっと、大丈夫?」


そう言いながら駆け寄って来る米川さん。何とか答えようと身体を起こしてみるけれど、頭が働かない。とりあえずバスケットボールを硬くした人を私は一生恨むと思う。


「鼻とれた……?」


左手で鼻を押さえながら右手でオッケーサインを作り、呆然としたまま米川さんへと問いかければ、ぶはっと笑われた。


「とれてないよ、ついてるついてる」

「あ……よかった……じゃあ大丈夫です……」


ごめんわざとじゃなかったんだけど、と謝る米川さんに慌てて首を振る。ぼんやりしていたのは私のほうだ。

そう伝えると、米川さんはほっとしたように息を吐く。


「っていうか、結構大きい声出るんだね」

「え」


バスケットボールをダムダムと突きながら、意外そうに米川さんが言う。

その言葉でようやく我に返り、みんなの注目を集めていたことに気付いた私は、反射的に俯いて前髪で壁を作って隠れたのだった。