「紫苑先輩、今日は放課後お休みですか?」


問いかければ、意外そうに目を瞬かせた紫苑先輩。


「正解。よく分かったわね」

「あ、えっと、髪の毛、編み込みしてて可愛いので、そうかなって」


淹れてもらったオレンジジュースを一口飲んで、そう答える。ココアの甘さがオレンジの酸味と混ざって、絶妙に美味しい。日向先輩は私の正面に座り、今回のゴッドフェスの引きが悪いとかどうとか嘆いていた。


「可愛い? ほんと!?」


両サイドの編み込みを指差しながら、これ時間かかったのよ、と紫苑先輩は呟く。

すごく凝ってて可愛いです、と何度も頷けば、ありがとう、とハスキーな声が返ってきた。


「あと、あの、放課後お休みのとき、いつもと違う香水ですよね」


そう言うと、スマホの画面から顔を上げた日向先輩が、スンと鼻をひくつかせて首を傾げる。


「え、そうか? 俺全然分かんねーわ」


紫苑先輩の匂いを例えるとすると、いつもは控えめで清潔感のあるようなフローラルで、放課後お休みの日は控えめだけれど甘さのあるフローラルなのだ。

この微妙な違いを説明しろと言われると、難しいものがある。


「何というか、女の子らしい匂いですよね」

「わ、本当に~?」