ものすごい勢いで部室のドアを開けた私を、鬱陶しそうに真央くんが見た。

でももうそれどころじゃないのだ。片手に持っていたお弁当箱を机の上に置きながら、私は今にも叫びたい気持ちを押さえて、うぐぐぐ、と唸った。


なんでだよ! 私はやっぱり馬鹿だなおい! お昼休み終わったらどんな顔して教室に行ったらいいんだ!


「はああああ……」


大きく溜め息を吐き出した。心臓がドクドクと鳴っている。

視界の端で真央くんが立ち上がる。ふわふわと色素の薄い髪を揺らしながら、項垂れる私の後ろを通り過ぎて、冷蔵庫を開ける音が聞こえた。


あのときの米川さんの驚いたような表情。教室中から向けられていた視線。サーッと顔から血の気がなくなって、考えるより先にスマホとお弁当を持って逃げ出した。

廊下での私の激走を見た人は、私の50mのタイムが10秒台だなんて思いもよらないだろう。