……終わったの?


あれだけ酷かった悪寒も、身体の重みも、今はすっかりなくなっている。


生徒玄関に到着すれば良いんだよね?


正確には、ドアに触れたら終わりのようだけど。





「ハァ……ハァ……お願い、彩乃を……元の姿に戻して」





そう呟きながら、校門で待っていてくれているであろう二人の元に行こうと、ドアのロックを解除して外に出た。


瞬間、感じる冷たい風と解放感。


何かがスーッと身体から離れて行くのが分かる。


もしかして、ドアに触れた時の感覚は、最後の罠だったのかな?


終わったと思って振り返ったら、幽霊を見てしまって失敗してしまうとか。


……何はともあれ、これで成功したんだよね?


彩乃は元の姿に戻ったんだよね?


全く実感する事は出来ないけど、そう信じたい。


「な、菜々!!成功したのか!?」


校門にいた、向井さんと南部君が駆け寄って来る。


言い様のない疲労感に包まれて、引きつった笑顔を二人に向けながら、私は手を上げた。


これで一回目が終わったのなら、二回目をする事はない。


だって、彩乃が簡単だと言った一回目ですら、こんなに気が抜けなかったんだから。


二度としようと思わないのは私にとってありがたい。