な、何……この人。


さっき廊下に出た時はいなかったのに、いつ現れたの?


これが幽霊なの?


だとしたら、向井さんが言っていた「幽霊を見ようとしてはいけない」というルールを、早くも破った事になってしまう。


もうダメなのかなと半ば諦めかけていた時、その幽霊は音楽室の前の一部分を指差したのだ。







……どういう事?まだ大丈夫と言いたいの?


そう言えば、19時19分になっていない。


あのおまじないは、まだ始まっていないんだ。


白と黒……うちの学校の女子生徒と同じ制服を着て、背を向けて立つ幽霊。


幽霊に近付くなんて怖いけど、ここまで来たんだからやるしかない。


覚悟を決めて、幽霊が指差す場所に歩を進めた私は、ブルブルと震える身体を必死に抑えて、その時を待った。


待っている間、幽霊は何も言わず、微動だにせずに、ただ指差しているだけ。


早く19分になってと、恐怖に怯えていると……。






ジジッ……ジッ。







今まで点いていた頭上の蛍光灯が、小さな音の後、フッと消えたのだ。


その瞬間、背後に感じる奇妙な息遣い。


振り返って確認したくなるような存在感に、私は確信した。


19時19分になって、始まったのだと。