私が返事をしなくても、その人は話を続ける。
「潤を守るって決めたのにな……俺は何も出来なかった。菜々が、潤を幽霊に見えていた時だって、守れなかったんだよ。ダメだな、俺は」
鼻をすすりながら、私の手を擦る。
その後も色んな話をしてくれたけど、話の内容なんて何も覚えていない。
南部君……潤。
向井さん。
彩乃ちゃん。
弘志。
その名前だけに反応したけど、それもすぐに忘れてしまう。
私の全ては、この窓から見える景色だけで。
「……じゃあ、明日も来るよ。また俺に綺麗な声を聞かせてね。可愛い子猫ちゃん」
ポンポンと、私の頭を二回叩き、部屋を出て行った。
誰もいなくなった、薄暗い部屋の中。
話し声もなくなり、一人だけの時間が再び訪れる。
いつから私はここにいるんだろう。
目が覚めると窓の外を見て、暗くなったら眠る。
時間によって明るさが変化する、遠くに見える山を見ているだけ。
そんな私の目に、ふわりと舞い降りる白い物が映った。
「潤……雪が降ってる」
ポツリと呟いた、頭に残っていた名前。
ずっと握っていた、割れたネームプレートに視線を落として。
私は涙を流した。
「潤を守るって決めたのにな……俺は何も出来なかった。菜々が、潤を幽霊に見えていた時だって、守れなかったんだよ。ダメだな、俺は」
鼻をすすりながら、私の手を擦る。
その後も色んな話をしてくれたけど、話の内容なんて何も覚えていない。
南部君……潤。
向井さん。
彩乃ちゃん。
弘志。
その名前だけに反応したけど、それもすぐに忘れてしまう。
私の全ては、この窓から見える景色だけで。
「……じゃあ、明日も来るよ。また俺に綺麗な声を聞かせてね。可愛い子猫ちゃん」
ポンポンと、私の頭を二回叩き、部屋を出て行った。
誰もいなくなった、薄暗い部屋の中。
話し声もなくなり、一人だけの時間が再び訪れる。
いつから私はここにいるんだろう。
目が覚めると窓の外を見て、暗くなったら眠る。
時間によって明るさが変化する、遠くに見える山を見ているだけ。
そんな私の目に、ふわりと舞い降りる白い物が映った。
「潤……雪が降ってる」
ポツリと呟いた、頭に残っていた名前。
ずっと握っていた、割れたネームプレートに視線を落として。
私は涙を流した。