彩乃には、夢とは違う状況で夢と同じような事を言われたんだけどな。


それでも、向井さんの心遣いは分かるから、私は何も言わなかった。


大好きな南部君が、私の為に頑張ってくれたんだ。


命を救ってくれたんだと思うと、不安はあるけど足を前に出せる。


「じゃあ向こう側に渡ろうか。そろそろ潤と合流してもおかしくないしね」


学校と向井さんの家の中間。


それが丁度この国道くらいなのだろう。


向井さんに背中を押され、歩道橋へと向かった。


歩く事は出来る……だけど怖い。


車が起こす風が私の身体を撫でて、死を誘っているんじゃないかと思ってしまう。


一度死を予感してしまうと、ほんの少しの事でもそれが引き金になりそうで。


それでも、私の背中を押してくれる向井さんの手が、負けるなと言ってくれているよう。


階段を上りながら、ピリピリと張り詰める周りの空気を感じていた。


南部君に会えば、この嫌な空気も無くなりそうな気がする。


顔を見て安心したら、私の身に降りかかった呪いはおしまい。


失った物もあるけれど、次は南部君を助ける為に頑張れる。


そんな気がして、向井さんと一緒に歩道橋を歩いた。


もう少しで、この数日間私を苦しめた呪いが終わる。