膝が震える……腰を抜かしてしまいそうになるのを必死で我慢して、ゆっくりと足を前に出す。


怖くて、不安で、心臓がバクバクと動いているのが分かる。


なのに、足を動かしている感覚は不鮮明で。


人魂に近付くにつれ、その威圧感に恐怖心が募る。


「こ、これに失敗した人達は、どうして失敗したの?もしかして、あの笑う幽霊に捕まったとか?」


怖いけど、話はしないといけない。


声が震えるのに……言葉なんて出そうにないのに無理矢理に絞り出す。


寒くてたまらないのに、身体中に汗をかいているのが分かる。


雨で制服も濡れていて、全身ずぶ濡れの感覚が体力を奪っている。










「ウン ソウ。アレニ ツカマッタカラ……」











人魂よりも、この幽霊の声の方が、今となっては怖くない。


慣れたからなのか、この幽霊自体は何もして来ないからなのか。


怖いのは間違いないけれど、話をしていた方がまだ怖さを感じないから。










「気を付けろ……あいつに気を付けろ!!」









生徒玄関に差し掛かった時、人魂の一つが私に接近し、すれ違い様に、そんな唸り声が私の耳に届いたのだ。


悲痛な叫び。


私にはそんな風に聞こえた。