秘色色(ひそくいろ)クーデター


「でも、やめ方がわかんねーんだよ。今更。悪いことをしたって頭ではわかってるけど、心から思ってるわけじゃねえ。こいつだって……て今も思ってる」


 鷲尾先輩は、ただじっと、黙って、浜岸先輩を見つめていた。


「だけど、取り敢えずこいつに謝らねえと、前に進めねえんだよ!」


 最後にそう叫んで、先輩はがっくりとうなだれた。
 そして、それまで黙っていた鷲尾先輩が、「ほんとに」と苦笑を滲ませる。


「ほんとに、きみは自分勝手だよね。謝ってないよ、そんなの」

「……わかってる」

「でも、もういいよ」


 やけにすっきりしたような表情だった。
 声からは、戸惑いも、怒りも、諦めも、感じない。


「きみの声を、聞けてよかった」

「殴ってもいいぞ」

「……いやだよ。痛いから」


 クスクスと、先輩の笑う声が教室に広がる。

 それを聞いていると、さっきまで張り詰めていた空気がほぐれていき、自然とみんなの顔にも笑顔が浮かんだ。


「ま、仕方ないわよね。いいんじゃない。楽しかったし」

「ぼくも、わくわくした。自分にもできることがあるんだって、自信になったしね」

「……おれは、もう一度みんなに聞いてもらってたし。ぶちまけて困らせたかったけど……もう、いいや」


 みんなが次々に口にする。
 私は、嬉しいような取り残されたような、そんな気持ちになっていく。

 私は……私は誰に、伝えたかった? 溜め込んだ気持ちを、どうしたかった? そもそも、どうして、こうなった?


「んじゃあもういいよー。私は彼氏の意見無視してみんなに交際宣言しちゃうんだから!」


 あーあ、と残念そうに蒔田先輩が背伸びをした。
 表情はあまりがっかりしているようには見えない。


「俺は、久に文句でも言うか」

「大和、くん」

「大丈夫だよ、お前も、言えるよ。俺らに一番思ったことを口にできていたのはお前だから。もう、わかってんだろ」


 わかってる。ほんとはずっと前から、分かってた。
 だけど、どうしていいのかずっとわからなかった。

 その答えを、私はみんなともう、見つけていた。


「聞かれなかったなら、聞かせてやれ」


 泣き出してしまった私の頭に、大きな手が添えられた。





 家に帰ったのは、七時過ぎになってしまった。

 あのままずっと指導室に閉じ込められて、先生たちにもたくさん怒られた。反省文も書かされて、散々だった。

 まあ、そのくらいのことをしようとしたのだけれど。

 でも、来栖先輩のしたことについては会長も言わなかったらしく、それに関してはなにも言われなかった。


 帰り、靴箱のところで見かけたのは順位表。
 けれど。
 そこには全員分の名前ではなく、上位50名だけが書かれていた。

 どういう過程があって突然そんなことになったのかはわからない。だけど、会長が色々考えて、先生たちと話をしてくれたのかもしれない。


 誰もそれについてはなにも言わなかったけれど、大和くんは小さな声で「すげえなあ」と言った。

 私たちが、叫んだ思いが伝わって、ほんの少しだけ形を変えていく。



「ただいま」

「あ、お帰り、輝」


 
 玄関にはもうお父さんの靴があった。
 リビングから顔を出して、お母さんが「御飯食べるでしょ」と笑顔をみせてくる。


 私が本当に伝えたかった言葉。
 飲み込んで、ずっと苦しかった思い。



「私」

「え?」

「私、いじめなんて、してない」


 私の言葉に、お母さんが声にならない「え」を発して驚いた顔で私を見つめた。
 リビングでテレビを見ていたお父さんも顔を上げた。


「……してないの」


 してないんだ。本当なの。

 なかったことにしないで。謝って、会話を避けたりなんかしないで。

 私に、聞いて欲しかった。

 "そんなこと、してないよね?"って。"本当なの?"って。確かめて欲しかった。なにも言わずに頭を下げたりなんてしてほしくなかった。


「なんで、なにも、言ってくれないの」


 いっそ、私がいじめたと決めつけて怒られる方がマシだった。
 私になにも言わずに、なにもなかったかのように笑わないで。

 そしたら私は……今までずっと、言えなかったことが言えたのに。


「私、1年の頃から、みんなに無視されてた、の」


 あの事件から友だちがいなくなったと思ってたでしょう?
 でも本当はずっと前から、私はひとりだった。

 それを隠すように必死に笑ってたんだよ。


 言えなかった。言いたくなかった。だけど、ほんの少しだけ、耳を傾けて欲しかった。


——『翔子ちゃんは元気?』

——『今日は、誰と遊んでたの?』


 本当は答えようがないこと、知ってるくせに、なんでそんなこと言うの。私の答えがウソだってわかってるくせに、なんでそれを無視するの?


——『高校はどう?』

——『友達と遊んでたのね』


 どうして高校に入ってからの友達の話を、疑うの?


 気にして、疑っているのに、黙ってないでよ。
 聞いてよ、私に。目の前にいるのに、どうして……聞こうとしてくれないの。耳を塞いでしまうの。


——『高校、どこにいくの?』

——『この高校、ちょっと遠いけど……とてもいいところなんですって。こことか、どう思う? 輝の偏差値なら受かると思うわ』

——『公立もいいけれど、せっかくだし、遠くまで通うのも、新しい友達と出会えるわよ。途中の駅は遊ぶところもたくさんあるし』

——『ここがいいんじゃないかしら』


 ねえ、なんでそんなこと言うの?
 私、そんなの気にしてなかったのに。寂しかったけど、それでも、踏ん張って戦ってたんだよ、私。

 
「私に"いい"って、お母さんとお父さんが……いいと思うだけじゃない!」

「輝……」

「私……美術学科のある、高校に、行きたかっ……た」


 絵を描くのが好きだった。
 ずっと、ずっと私は行きたい高校があった。

 公立だったから、同じ中学から進む子も多いだろうから、また高校でもひとりになることを、もしくは、以前のウワサが広まることを、恐れたんだろう。

 迷惑をかけたのだってわかってる。
 だから、私は今の高校を選んだ。

 ただ、それでも。

 私に一度でいいから、聞いて欲しかった。
 ずっと、行きたいと言っていた学校があるのを、知ってたじゃない。何度も話していたじゃない。


——『そのほうがいいと思うの』
——『きっと、楽しいわよ』


 なんで、なにも、言わないの。
 いいか悪いかわからない。私は、考えることすらできなかった。


 うまく言葉にできない。
 涙が溢れてうまく声がでない。

 人に気持ちを伝える方法を、私はまだわからない。言葉がたりなさすぎて、上手く言えられない。


 察して欲しいと思っているわけじゃない。
 でも、思いを口に、言葉にするのはとても難しい。


 言おうと思っても、喉が締め付けられて言葉が出なくなってしまう。それがどんどん溜まって私の心を重くさせていく。


 だから。
 ほんの少しでいいから。


 間違っててもいいから。正しいことなんてわかんないから。



「耳を、傾けて、声を、聞いて」



 間違っているなら怒って教えてほしい。正しいならそれを応援して欲しい、わからないなら、一緒に考えて欲しい。


 勝手に答えを、出さないで。

 言いたいことが、伝えたい気持ちが、たくさんたくさんあるんだ。


 言わなくちゃ、と思うと、のどがヒリヒリと痛んで、息をうまく吐き出せなくなった。声を出さなくちゃと思うと、代わりに涙が溢れてしまって、より一層声が出なくなってしまった。


 だけど、叫びたい。




「……っ、ごめん、ごめん、なさい」





 ほんとはずっと、その一言を言いたかった。
 頭を下げさせてごめんなさい。

 私のために、頭を下げているのがわかっていたから、ごめんなさい。




「ご、ごめんなさい……ごめん、なさい、心配ばかりかけて、ごめん、なさい」



 聞いてもらえないことに、意地になってその一言を今まで言えなくて、ごめんなさい。




 
  (ノ*゚▽゚)ノ<青春謳歌せよ






o
*


.

.


 窓の外には青空。牢屋から外を見る人はみんなこんな気分なんだろうか……。
 はるか遠くにあるような、そんな気がする。


「あー……もう! めんどくせえ!!」


 ガターン、と後ろから大きな音が響いて、恐る恐る振り返った。

 一番後ろの席で、浜岸先輩が机に足を乗せて眉間にしわを寄せている。舌打ちを何度もしながら目を閉じていた。


「ちょっともぉー、ほんっと大きな音出すしかできないのぉ。後輩がびびってんじゃないのぉー」

「うっせえなあー。しかたねえだろ、だりいんだよ!」

「す、すみません……」


 舌打ちとともに吐き出された悪態に、体を縮こませて謝罪を口にすると、慌てた様子で「ちげーって! おまえのせいじゃねえって! なに謝ってんだお前!」と怒られているのかフォローされているのかわからない口調で言われた。


 夏休み3日目。
 土日をすごして、月曜日の今日。


 クーデターを起こそうとした私たちは生徒指導室に閉じ込められている。もちろん、会長も。

 七瀬先輩だけはそのとき放送室にいたおかげで仲間だと思われていないらしい。みんなもあえて口には出さなかった。


 今頃放送室でみんなが終わるのを待っているんだろう。

 先輩は呼び出されていないのに。わざわざ来てくれた。さすがにひとり知らん顔して過ごすのは心苦しいのだろう。

 でも……羨ましい。放送室でのんびり好きな機械をいじっているのだろうか。


 目の前の机には、作文用紙が大量にある。いわゆる反省文というやつらしい。この前も書いたのに、もう一度書かされている。意味がわかんない。

 おまけに夏休みの間は毎日レポートを書かされ、毎週末提出することになっている。絵日記の宿題か!


 はあ、と、文字が全く埋まらない作文用紙を見つめながらため息を落とした。
 今更だけれど、これはやっぱり、私のせいだ。

 だって、あのとき、やめようかという雰囲気の中で"やりましょう"と口にしたの。

 もちろん私だけが悪いとは思ってないけれど、あのとき私がそう言わなければ、こうはなってなかったんじゃないかと思う。


 そのせいで今まで進路指導室と無縁だった先輩たちを。立森先輩や会長は受験生なのに!


「っていうかよー、どう考えてもあの生徒会長のせいだろ」

「そうだよねーあんな土壇場でさー、意地悪くないー? 言うならもっと早めに言えばいいのにねえー」

「……おれもここにいるんだけど」


 蒔田先輩と浜岸先輩の言葉に、会長が気まずい顔をして振り返る。


「未遂で済んだおかげで、他の生徒にこのことが広まらないんだから、ちょっとは感謝してほしいなあー」

「うっせーよ! よく言えるなお前!」


 ああ……浜岸先輩は元気だなあ……。
 相変わらず大声だし、偉そうだ。でも、前より怖くはなくなった。

 そばにいる先輩たちも、今までは浜岸先輩の声におどおどしていたけれど、今はクスクスと笑っている。



 窓の外には相変わらず、制服のシャツの同じ色の空が広がっている。白く、薄い膜が張ったような、うす水色の空。

 茗子たちとも遊びたいのに、いつまでここに閉じ込められなければいけないのだろう。

 カラオケも行きたいし、プールも行きたい。ずっと話してたカフェにも行きたいし、買い物もしたい。楽しい夏は、夏休みは、これからだ。



「そういえば、お前、ちゃんと言えたのか? すっきりした顔してるけど」

「え? あ、うん……なんか、ぐだぐだになっちゃったけど」


 大和くんに言われて、苦笑をこぼしながら思い出す。


 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって、わんわんと子供のように泣き叫んだだけだった。これといって両親と話したわけじゃない。


 ただお母さんが小さな声で「ごめんね」と言ってくれた。


 本当に疑っていたわけじゃないんだよ、と昨日夜、お父さんが言っていた。ただ、あまり触れないほうがいいだろうとお母さんと話していたらしい。

 そんな両親の気持ちを考えると、私も耳をふさいでいたんだなあ、人のこと言えないなあと、子供で、狡くて、自分勝手だったと思う。


 聞いて欲しいと思うと同時に、私は聞きたくないとも思っていたんだ。
 自分のことでいっぱいいっぱいで人の気持ちを考えようとしなかった。



 なんて、自己中心的な思考だったのだろう。


 だけど、必死だった。




 翔子の言葉を遮った、あの日。彼女がなにを伝えようとしていたのか、私は、耳を傾けるべきだった。


 もっと、もっと前も。

 無視をしようと言い出した友達に、私は"どうして?"と聞いてみてもよかったかもしれない。

 今度、電話があったら、駅で会ったら、声をかけてみよう。

 それで仲直りできるかはわからない。
 私はまだ彼女たちのことを優しく受け入れられるほどできた人間じゃないし、相手もそんなつもりはないのかもしれないし。


 でも、話してみないとわからないんだ。


「……絵を、習いに行きたいな」

「へー。お前絵とかかけるんだ」

「これでも順位表で美術は10番以内になってたんだから」


 自慢気にそう言うと、大和くんはまた「へえ」と言った。


 諦めてしまった、無理だと思っていた。
 でも、やりたいなら、また、声にすればいいんだ。



 うまくいくかなんて、まだまだわからない。

 2学期が始まればまた、学校でいじめを目にすることがあるだろうし、先輩たちだって急に友だちができる、なんて思ってないだろう。


 解決することは難しい。
 すぐになにかが変わるなんてことはなかなかない。


 でも。

 一歩を踏み出せたから、次の一歩がまた踏み出せる。同じ方法だったり、過去の失敗を活かして違う方法だったり。

 なにより一歩を踏み出せた自分のことを、昨日よりも好きになれる。


 クーデターを起こそうとしたことは間違っていたかもしれない。
 でも、行動に移そうと決意した気持ちは、宝物のように思える。


 あの日、決意した気持ちを、忘れないでいたい。



「……両親に言えて、よかった。私の悪いところもたくさん、分かった」

「よかったな」

「ありがとう、大和くんといっぱい話せたから、私は私らしく、過ごすことができるよ」

「大げさだな」


 素直に告げると、大和くんはちょっと照れたように見えた。


「でも、俺も」

「んー?」

「相田がいつも話しかけてくれたから、挨拶するっていう行為が誰かとできていたから、学校にこれたと思ってる。久のことも、知れたしな」


 ちょっと恥ずかしそうに、目をそらしながら小さな声で告げた。
 しっかりと聞こえてきた嬉しいセリフ。だけど、「え?」と思わず聞き返してしまった。

 それを聞いて、大和くんは少し、いじけたような表情で私をちらりと見る。


「お前が声をかけてくれるのが、嬉しかったって、ことだよ」



 頬を赤く染める大和くんにつられたのか、それとも大和くんのセリフのせいなのか。私の顔が、ボッと火が付いたかのように熱くなった。





「なーなーお前生徒会長だろ、この部屋の鍵とかもってねえの?」

「持っているわけないだろ」

「使えねえ生徒会長だなあー」


 もう反省文を書くきは全くないらしい。
 暇そうに椅子をゆらゆらと前後に揺らしながら浜岸先輩が会長に話しかける。

 会長は呆れたようにため息を落とした。


「出られたとしても、どうやって帰るんだよ。先生たちに会ったらこの反省文倍になるね」

「……窓から出るとか?」

「無理よそんなの。そもそも外に出たところで靴ないじゃないの」

「えぇー靴とかどうでもいいじゃん。反省文書くより上靴で帰るほうが絶対マシ!」

「でもぼくたちがいるのを知ってたら先生も警戒してるんじゃないかな……」

「中等部から抜けたらどうだろ」

「っていうか、七瀬くんに靴持ってきてもらう?」


 鷲尾先輩の提案に、みんなの目が輝いた。


「靴持ってきてもらって、靴に履き替えてどうする?」

「校舎はさすがにリスクが高いよな」

「非常階段使えば? そのまま体育館裏に回って、中等部の校舎をぐるっと回って校門からでたらいいんじゃねえ? さすがに中等部からの生徒まで気にしてねえだろ」


 大和くんの言うように、それが一番確率が高そうだ。
 校門を出てしまえばこっちのものだろう。


「いやいや、まずどうやってここから出るんだよ!」


 そこが一番の問題だ。さすがに窓ガラスを割るわけにもいかない。割ったってここは3階だし。

 さっきの勢いを失ってみんなが無言になってしまった。

 そう。鍵がないんだよなあ……。……鍵。この部屋の、鍵。


「あ」


 そう、鍵だ。


「なに?」


 問いかけてくる大和くんを無視して、鞄の中を探る。
 返さなくちゃと思っていた鍵がまだ、あるはずだ。

 美化委員で預かったままの鍵。私はまだそれを、返していない。


「あった」


 手にして振り返ると、みんなの瞳がキラキラと輝いていた。





 空は高く、太陽が照り輝いている。


「シャツと同じ空」

「なにそれ」


 七瀬先輩に靴を持ってきてもらって、生徒指導室を私の持っていた鍵を使ってこっそりと抜け出した。

 中等部の校舎裏は見つかる可能性は殆どない。だから、みんなのんびりと校門を目指しながら歩いていた。

 白く感じる空を見上げながらつぶやくと大和くんが突っ込んできた。

 自分のシャツをつまんで「この青鼠色の空」と笑う。


「それ、青鼠じゃねえよ」

「え? どういうこと」

「俺らのシャツの色は、えーっと、なんだっけ?」


 首をひねっている大和くんに、前をしぶしぶ歩いていた会長が振り返る。

 最後まで渋っていたけれど、みんなに「共犯者だろ」と無理やり連れだされた会長は、そわそわ落ち着かない様子だ。

 こういうの慣れてないんだろうなあ。

 みんなもそんなことしそうにないけれど、一度クーデターを起こそうとしたからか、大胆になったような気がする。もちろん私も。


「生徒手帳に書いてるけど、見てないの?」

「っていうか入学式でも校長かだれかがしゃべってたよなあ、なんだっけ、このシャツの色」



「秘色色(ひそくいろ)」



 秘色、いろ。この色が。



「着物の色だよ。昔は庶民の使用を禁止されてた、色。高校生活が、青春が、そんな貴重な高級感のある、特別な日々になるように、とかそんな理由」

「へえ……」


 秘色か。この色が。
 そう言われると、すごく、綺麗な色に見えてきた。

 青春の色。そうか、私たちの青春は、秘色色なのか。


 中等部の校舎を抜けると、校門が見えてくる。逃げ出したい気持ちが高まって、みんな自然と小走りになる。

 すると後ろから「お前ら!」と大きな声が響いた。
 教室にいないことに気づいた生徒指導の先生が、廊下の窓から顔を出して私たちに叫んでいる。

 つるっと禿げ上がった頭が太陽の光を反射させた。


「うわ、やべ見つかった!」

「逃げるよ! 今更捕まるとかありえないー!」


 目の前のみんなが、一斉に走りだす。みんなが綺麗な色の青色を身にまとっていて、空と同化して見える。


 秘色色に染まる、私の毎日。