「ふぅん。お前、ひとり?」

哲也がキョロキョロとあたりを見回す。


なんだか、胸騒ぎがした。


「はい」

「お前も大変だよな。千夏に目ぇつけられるなんてさ」
そう言いながら、哲也はあたしのそばに立った。

「大丈夫です。もう、教室に戻りますね」
そう言って離れようとしたあたしの手を哲也がつかんだ。

「お前、俺らの犬だろ?」

「……離してください」

強く握られている。


痛い……。


「犬なら、俺にもやらせろよ」

「なっ……」
そう言いかけた瞬間、足をかけられあたしはコンクリートに倒れこんだ。