「純子」

ある日の朝、下駄箱で遙香が声をかけてきた。

あれから一週間が経とうとしていた。

毎日のようにお弁当を食べられ、捨てられ、そして飲み物を買いに行かされていた。

「ああ、遙香」

あたしは急いでいるそぶりで上靴を履きかえると、歩き出す。


話をしたくなかった。


だって、話せないよ。

遙香にだけは泥棒だと思われたくないから。

「ねぇ、待ってよ」

腕をつかまれて、あたしは立ち止まった。


振り向くと、遙香の真剣な顔が近くにあった。

「……どうしたの?」

「それはこっちのセリフ。純子、いったいどうしちゃったの?」

「……べつに」