「泥棒に金なんか払うかよ。こうして学校に来られるだけでもありがたいと思えよな!」

そのままあたしを強く押す。

態勢をとる間もなく、あたしはコンクリートにひっくり返った。

「純子さぁ」

驚いて渚を見上げるあたしに千夏の声が聞こえる。
「逆らわない方がいいよ。あたしたちに逆らうと、ホント、生きていけないからさ」

「純子、いま千夏が言ったことは本当ですよ」

美鈴もクスクス笑っている。

こんなの……普通じゃない。

ゆっくりと起き上がると、右手の手のひらがこすれて血が出ていた。

「さっさと行けよ」

上から降ってくる渚の声に、あたしは立ち上がる。

どうやって屋上から出たのか覚えていない。

気がつくと、呆然としたままあたしは階段をおりていた。

ジュース。

お茶。

ウーロン茶。

呪文のように頭のなかで繰り返す。