残されたのは、あたしと千夏。

千夏は兼子先生がいなくなるのを確認すると、
「あー疲れた」
と、両腕を挙げて伸びをした。

その顔に、さっきまでの泣き顔はない。

「千夏……」

「純子、これで分かったでしょう?」

千夏の顔があたしに近づく。

片方の口を上げてフフッと笑い声を漏らす。

「全部、あなたが……?」

「さっきカバンに仕込んだの。気づかなかった?」

言われてはじめて気づく。

昼休みにあたしのカバンに千夏は触っていたではないか。

その時にきっとこの5万円を仕込んだんだ。

「ひどい!」

さらにあふれる涙を拭いながら、立ち上がって叫んだ。

声が震える。