泣き声ではない。

強い言い方に兼子先生が口を閉ざした。

「もういいんです。ここだけの話にしてください」

「でも……」

「純子も反省しているはずです。これ以上話を大きくしないでください。父親が悲しみます」

父親、という言葉に兼子先生が反応した。

地元での有力者、というのは本当の話なのかもしれない。

「柴田さんがそう言うなら……」

「大丈夫です。誰にだって魔がさすことはあります。もうしないよね? 純子」

優しい笑顔。

その笑顔にあたしは思わずうなずきそうになり、寸前でこらえた。

「わかったわ。それじゃあ、この話はここまでにします。山本さん、柴田さんに感謝しなさいよ。本当なら警察沙汰になるところなんだから」


そう言うと、兼子先生は指導室から出て行ってしまった。