……なに、今の?

ゾッと背中に悪寒が走った。

やがて兼子先生は、カバンのサイドポケットを開ける。

そして、その目が大きく見開いた。

右手をそこに突っ込むと、なにかを握りしめて取り出した。

テーブルに置かれたのは、折りたたまれた1万円札。

「これは……なんなの?」
声が低くなった兼子先生がつぶやくように言った。

1万円札は5枚あった。

「知りません。私じゃありません!」

「じゃあ誰がここに入れたって言うのよ!」

バンッ!

両手で兼子先生がテーブルを強く叩いた。

「知らない……。あたしじゃないっ」

「あなたっていう人は……」

あたしを見る兼子先生の目は、まるで汚い物でも見るかのよう。


さげすんだ視線があたしに向けられている。