先生は「うん、うん」と何度かうなずくと、鼻から息を吐いて姿勢を正した。

「山本さん」

「はい」

「カバンの中身を確認します」

「そんな!」

あんまりだ。

どれだけあたしを疑えば気が済むの!?

「いいから、こっちへよこしなさい!」

先生が立ち上がり、あたしのカバンを奪い取るのを信じられない気持ちで見ているしかできなかった。

先生は、カバンのチャックを開けると、中身を改めだす。


そして___あたしは見た。


千夏があたしを見て口の端を上げて笑ったのだ。

「千夏……?」

声には出せずに口だけ動くあたしに気づいて、千夏はまたすぐに表情を泣き顔に戻した。

兼子先生は気づかずにカバンの中身をテーブルに出している。