「助けて……。助けて……」

こわれた人形のように千夏は繰り返している。

「棒を持ってこい!」
「急げ!」

怒号が飛び交う中、純子はほほえんでいた。

純子の姿は警官には見えていないらしく、警官の体が純子をすり抜ける。


ああ……、やっぱり純子は死んでしまってるんだ。


「あなたや太一にひどいことをしてごめんなさい。鏡さんにも」

「純子、ねぇ、純子。お願いだから……」

嗚咽が漏れた。

こんなのってないよ。

「ありがとう。これであたしは消えるけど、後悔はないの」

「ひどいよ。お葬式でもお別れして悲しかったのに。2回もさようならをしなきゃいけないの?」