「言わないで」
純子がまた千夏を見おろしながら言った。

恐怖にゆがんだ千夏は、わなわなと震えている。

握る手に力をこめた。

「……でも」

「あたしは、悪魔に命をささげたの。それは、あたしをいじめてきたヤツらへ復讐をするため。だから、今とっても幸せなの。だから止めないで」

冷たい言い方でも、おそろしいほどの迫力があった。

「じゃあ今までの人たちも、純子が……?」

「もちろん。すっごく気持ちがよかったよ。恐怖におびえる人を殺すのは」

私の手を握り返しながら純子が笑った。

「でも、殺すのはよくないよ。千夏だって反省してるよ、ね?」

「助けて……」

雨を顔中に受けながら、千夏が言う。