純子はゆっくりとそっちを見ると、

「……ほんっと、情けない女」
と、低い声でつぶやいた。

右手を走り去る千夏の方へのばすと、サッとすばやく手前に引く。

すると、
「ぎゃあ!」
千夏の体がこっちに向かって飛んで来た。

それはまるで後ろ向きに宙を飛んでいるよう。


ズザザザザ!


私たちの足元に、すべって転がる。

純子はそのまましゃがむと、痛みにうめいている千夏の顔に触れた。

「ヒッ!」

千夏の息を呑む声。