「え?」

「授業料も少し遅れて入金されています。お金に困っているのよね? お母様は夜のお仕事をされてるって言うし」
 
「そんなの……」

そんなの関係ない!

そう言いたいのをグッとこらえて、あたしは両手を握りしめた。

「早く出しなさい」

「でも、あたしは盗んでいないんです。本当なんです!」
あたしは必死で言った。

だけど、兼子先生のあたしを見る目がそれを信じていないのは明らかだった。

「じゃあ、財布を見せて」

「財布……」

自分のカバンに目を落とす。

なんで?

なんで疑われなきゃならないの?

たまたま財布を見つけただけなのに。