「千夏!」
そう叫ぶ太一の姿が見えた。

その向こうに、誰かいる。

「太一!」

千夏の泣き叫ぶ声。

太一が千夏と思われる人に走り寄り、その手をつかもうと手を伸ばしているのが見えた。

もう少しで届きそうになったその時、


バンッ


すごい音がして、太一が私たちのそばに跳ね飛ばされた。

コンクリートの上を転がる。

「太一!」

そばまで駆け寄ると、太一は顔をすったのか傷だらけでうめいていた。