「鏡さん!」

「どうしたんだい? そんなずぶ濡れで」

苦笑している鏡。

「今、駆け抜けて行ったのは、佐藤君じゃなかったっけ?」

「鏡さん、大変なんです!」
すがりついて叫ぶ私に、鏡の目が真剣になる。

「どうしたんだ?」

「屋上に、千夏が……柴田千夏がいて助けを求めているんです!」

私の声に、鏡はカサを投げ捨てた。

「急ごう」

私はうなずくのももどかしく、校舎に飛び込む。

外靴のままで階段を上ると、鏡もそれにならった。