「ダメよ。私はこの学校の主任教師でもあります。こういう不祥事は絶対に許せません」
鼻息荒く兼子先生は宣言する。

パニック……。

頭がぐらんぐらんと回っていて、事態についていけていない。

「千夏、あたしがやったんじゃないよね? さっき、信じてくれたよね……?」

そう、なにかの間違いに決まっている。

だけど千夏は、ハンカチで涙を拭くと、
「ごめんなさい。さっきは、屋上に呼ばれて強く言われたから怖くって……。本当にごめんなさい……」
と、しゃくりを上げた。

「そんな……」

千夏はなにを言っているの?

屋上に呼ばれたのはあたしの方なのに。

強くなんて言ってないのに……。

「山本さん」

兼子先生が冷たい目であたしを見た。

「今ここで盗んだお金を出せば、事は大きくしないわ。あなたのご家庭はお父さんがいなくて大変なのは理解しています」